デジタル一眼レフカメラが広く普及し、フルサイズセンサーを搭載したミラーレス一眼のラインナップも増えてきました。同時にinstagramなどで綺麗な星景写真を目にする機会も増えてきたと思います。こうした星景写真は撮影するためには結構お金がかかります。一方で、スマートフォンに搭載されているカメラの性能が年々強化されているのも事実です。多くの場合は星を撮るにはまだまだ十分な性能ではないものの、HUAWEIのように「天の川撮影」を公言しているスマホも登場しています。今回はそうした新しい表現方法の1つとして360度カメラでの星空撮影を提案していきたいと思います。
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はじめに
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360度カメラとは?
その名の通り、360度、全天球を撮影できるカメラです。2枚以上のレンズを組み合わせて全天球を記録した画像、動画を出力することができます。RICOHのTHETAシリーズを皮切りに、多くのメーカーが360度カメラを発売しています。VRで楽しむ、リトルプラネット等特殊な編集を施すもよし、後から一定の画角を切り出して通常の写真と同じように扱うもよし、と言った具合にたくさんの表現の方法がある面白いカメラです。
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VRで星を撮る
プラネタリウムのような映像を誰でも撮れるという点でこのカメラは星を撮るのに優れています。筆者はTHETA Sの発売時に360度カメラの存在を知り、以降星を撮り続けてきました。その3年間で蓄積したノウハウをここに書き留めていきたいと思います。
筆者が撮影した全天球星空タイムラプスです。マウスでドラッグして視点を動かせます。スマートフォンではアプリから視聴してください。
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360度カメラの種類
360度カメラには大きく分けて次の3つのタイプがあると言っていいでしょう。
二眼タイプ
表と裏に2つのレンズが付いているタイプのカメラです。それぞれのレンズで180度以上の画角を撮影し、自動で合成して出力されます。扱う画像のサイズが小さいため、スマホで簡単に運用できます。1枚のレンズでカバーする領域が広いため、周辺部の画質の低下や収差などがデメリットです。筆者はこのタイプを使用しています。
RICOH THETAシリーズ
Shenzhen Arashi Vision insta360シリーズ
Samsung Gear360
GARMIN VIRB 360
KanDao QooCam
Vuze XR
GoPro Fusion
プロ用
二眼タイプより多くのレンズを搭載することで、画質が大きく改善しますが値段も数倍になります。各レンズで撮影した画像を合成して1枚に仕上げる「スティッチ」というプロセスに高性能なパソコンが必要となります。
Shenzhen Arashi Vision insta360 Proシリーズ
KanDao Obsidianシリーズ
DSLR RIG
DSLRとは一眼レフ、RIGというのはいくつかの機器を組み合わせた機材ということです。つまり複数台の一眼レフを組み合わせて360度画像を撮影するということです。星を最も綺麗に撮影できるのはやはり一眼レフですから当然品質は飛躍的に向上します。同時にハードルも上がります。単に一眼レフを数台用意するだけでなく、広角レンズも同じ個数用意し、固定するためのフレームを特注する必要があります。簡単に言うと数百万円はかかります。また、スティッチの作業を自前で行う必要があります。そのためのソフトウェアはeasypanoなどがありますがこちらにも数万円かかります。
SONY α7R数台で撮影された映像
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おすすめのカメラ
上記のうち、オススメは言わずもがな二眼タイプです。DSLR RIGははっきり言って個人で扱うのは現実的ではありません。複眼タイプでも数十万から数百万円はかかります。価格面から考えると二眼の一択ですね。
また、レンズが多いと言うのは星を撮る上では必ずしもメリットばかりではありません。#3で詳しく触れますが、レンズが多いほど、1枚の画像の上に見えない境界線が引かれることになります。さまざまなフィルターや合成を施すうちにレンズの境界部が線として浮き出てしまう可能性があるのです。
レンズの境界部が影となっているーTHETA Sにて撮影
レンズ収差や歪みと言った問題はあるものの、大きな写真用紙に印刷するわけでなければこれらの問題はあまり気にする必要はありません。
ここからは二眼タイプのカメラのうち、おすすめの機種を紹介していきます。
星を撮るカメラを選ぶ上で考慮すべき条件
・30秒以上の長時間露光に対応
星を綺麗に写すためには最低でも30秒のシャッタースピードを確保する必要があります
・RAW形式に対応
上記のように星景写真の肝は現像です。撮影した後から露出などを制御するにはRAW形式で記録する必要があります。
最もおすすめなカメラ
Shenzhen Arashi Vision - insta360 ONE X
露出時間 | 最大55秒 |
RAW撮影 | 対応 |
容量 | microSD |
センサーサイズ | 1/2.3 |
価格 | 約4万円 |
RAW対応
星空を綺麗に解像するために必須とも言えるRAW対応という点でポイントが非常に高いです。また、前身モデルであるONEに比べて暗所撮影でのノイズ対策が強化されています。
強力な手振れ補正でどんなシーンでも使える!
Flowstateと呼ばれる高度なスタビライズ機能を搭載しており、手振れのない360°動画を5.7K30fpsで記録することもできます。その他、バレットタイムや水中マウント、drifterというカメラを投げるマウントなど、星空を撮る以外にもアクションカメラとして使用できるため、表現の幅が非常に広いです。
バレットタイム
ダイビング
ドリフトダーツ
星景写真を追求したい方のためのカメラ
RICOH THETA Z1
露出時間 | 最大60秒 |
RAW撮影 | 対応 |
容量 | 19GB |
センサーサイズ | 1 |
価格 | 約12万円 |
THETA Z1 ISO:1600 Shutter speed:60 F value:2.1 - Spherical Image - RICOH THETA
THETA公式サイトより
1インチの大型センサー搭載
多くのカメラが1/2.3インチのセンサーを搭載している中、1インチのセンサーを採用しているため高感度撮影に強い仕様となっております。
動画も撮りたい方には不向き
高度なスタビライズ機能はないため、動画を撮影したい方は選ぶべきではないでしょう。また、容量が19GBしかなく、RAW記録では350枚ほどしか撮影できないため、星景タイムラプスを撮りたい場合も制約があります。
とにかく安く済ませたい方向けのカメラ
RICOH THETA SC
露出時間 | 最大60秒 |
RAW撮影 | 非対応 |
容量 | 8GB |
センサーサイズ | 1/2.3 |
価格 | 約2万円 |
とにかく安く始められる
値段を重視する場合はTHETA SCがおすすめです。相場は2万円ほどで、中古ならもっと安く手に入ります。RAWは非対応ですが、THETAシリーズはポテンシャルが高いため十分に星を解像することはできます。
RAW非対応でも解像能力は高い
RAW現像を加味するとinsta360 ONE Xに軍配が上がりますが、RAW未使用で比較するとTHETA SCの方が写りが良いと言えます。RAW非対応は残念な点ではありますが、カメラ自体のポテンシャルは非常に高いものです。
THETA SC
insta360 ONE X (JPEG撮影)
動画撮影機能はおまけ
動画は一応撮影できますが解像度が非常に低く、記録時間も5分までと制約があるため期待できません。本体容量は8GBと物足りませんが、RAW機能がないため一晩インターバル撮影をしても大丈夫です。また、改造で容量を32GBまで増やすことができます。これについては後日記事にしたいと思います。
兄弟機であるTHETA Sととの違いは動画の記録可能時間とHDMIの有無です。静止画に関しては違いがないので星しか撮らない方はSCを選んで問題ありません。動画を撮りたいという方でもTHETA Sでは解像度が非常に低いので動画のためにTHETA Sを選ぶメリットはありません。
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自分に合ったカメラを
このほか、180度3Dに対応した機種(insta360 EVO、Vuze XR、QooCam)、単体で防水性能を備えた機種(GoPro Fusion、Garmin VIRB 360)など、いろいろありますのでご自分に合ったものを検討してみてください。購入する前にスペックを確認し、instagramやYouTuae等で作例を確認することをおすすめ致します。
なお、筆者が所有している機体はinsta360 ONE XとTHETA SCですので今後はこの2台の使い方を中心に進めていくことになります。
次回はカメラの他に必要な器具について記します。
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